強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「子供かよ。こんなところにこもって」
「だって……!」
「とにかく、こっちに」
自然に私の手をとり、悠は歩き出す。
「離してよ。自分で歩けるから。ところで高浜さんは?」
「休憩時間になったから帰ったよ。帰りは俺が運転するから」
私の手を握った力は強く、離してくれる気配がない。
そのまま店を出て車に押し込まれた。
いつもは後部座席なのに、何故か今回は助手席だった。
「確認だけど。霧子は俺があいつを援護するような発言をしたことが気にいらないからトイレにこもってたんだよね?」
運転席のシートにもたれ、質問してくる悠。
私は答えたくもなくて、黙ったまま窓の外をにらんでいた。
「せめてこっち向きなよ」
「いや」
「だーかーらー。俺は霧子の味方だって。それは変わらないよ」
とんとんと肩を叩かれる。
「味方って、じゃあどうしてあんなこと言ったの」
そっぽを向いたまま答えると、小さなため息が聞こえた。