強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「それは、あいつを油断させるためだよ」
「油断?」
いったいどういうこと?
うっかり振り向いてしまった私に、悠はちょっぴり怒ったような顔で言った。
「あいつから、他の女のにおいがした」
「は?」
「きっと、他に女がいる」
何それ。例の異常嗅覚で、女の人のにおいを嗅ぎ取ったわけ?
「初対面のときから、ずっと同じ女のにおいがするんだ。多分、あいつ彼女がいる」
な、なんですとぉぉぉ! か、彼女ぉぉぉぉ?
あまりの衝撃に口をぱくぱくさせていると、悠がハンドルを指でとんとんと叩きながら話を続ける。
「そりゃあ、自分にも他に女がいるんだもんな。霧子が他の男と浮気しても許せるはずだ」
「ちょっと待って。じゃあ、さっきのは全部演技だったってこと? それにしてはやけに上手だったと思うんだけど」
「どうやっても、霧子との政略結婚だけは成功させたいんじゃないの」