強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「……あ……いや、それで家族がもめてるんだろ? 総理だって、自分の失敗を活かそうと思っているはずだよ。娘には辛い思いをさせまいと……うん、たぶんだけど」
だんだんと歯切れが悪くなってくる悠の言葉。
「まあ、浮気、いや本気かもしれないけど、その証拠をつかむのは不利益にはならなさそうだね」
とりあえず同調してあげると、悠はぱっと顔を上げる。
「だろ? よし、追いかけよう」
「えっ、今から?」
「野性のカンを信じなさい!」
そう言い、悠は勢いよく車を発進させた。
野性のカンって……野生動物と仲良くできるのは知ってるけど、あなた自体はぎりぎり平成生まれの現代人でしょうよ。
「ねえ、篤志さんがどっちに向かったかわかるの?」
車は住宅街の中を走り抜ける。
もちろん相手の車は私たちよりずっと先に出発していて、その姿は見えない。
「においでわかるよ」
「ああ、そう、におい……ウソでしょ!」
あんたは犬か!
「ちょっと黙ってて。集中してるんだから。あまり遅くなると、新城さんたちに怒られるし」
って……他のSPに、何も報告してないんか~い!
悠はふんふんと鼻を鳴らしながら、迷っている様子もなく車を走らせる。
もうやだ……ツッコミどころ多すぎて、ついていけないよ……。