強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「すみません」
べつにこんなもの、外したって構わない。さっと指輪を外すと、三歳年上の三浦先生が突然後ろから顔をのぞかせた。
「まあ、綺麗!」
「わっ、びっくりした……」
長い髪をした彼女は、看護教諭。出勤したばかりのようで、まだ白衣は着ていない。
「これって、婚約指輪よね? 霧子ちゃん、やるう。この前まで彼氏はいないって言ってたのに」
いえ、それ本当です。彼氏はいないんです。
他の先生もこっちに注目しはじめてしまったようなので、慌てて指輪をバッグにしまった。一応校長には話をしてあるけど、他の人には結婚して退職する時期が確定するまで、内緒にするつもりだったのに。
そう、篤志さんは私に専業主婦になることを望んでいる。
「なによ、よく見せてよ。見せびらかしたくてつけてきたんでしょ? 相当高そうね。もしかして相手はセレブ?」
悪意があるんだかないんだかわからない明るい声音で、三浦先生がからかってくる。
「いえ、そんな……」
うまくかわす方法が見つからなくてわたわたしていると、奥田先生がバン!と自分の机に教科書を叩きつけた。
三浦先生と一緒にビクッとすると、校長がごほんと咳ばらいをした。