強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「これでも霧子と別れないと言うのなら、今の会話を総理に聞かせてやる」
「録音でもしたか。薄汚い真似を」
薄汚いって……たしかに尾行したり、盗撮したのは悪いことだけど。
そもそもそれは、そっちが悪いことしているからじゃない。
「自由にしろ。ただ、この事実を知ったとしても、総理は婚約破棄を切りださないだろう」
「なんだと──」
「それだけ、この政略結婚には派閥の命運がかかっているんだ」
ずしりと、篤志さんの言葉の重みが心にのしかかる。
私の結婚は、私だけの問題じゃない……。
「政略結婚をさせるために、わざわざ愛人の子を引き取って育てたんだ。ここで引き返したら元が取れないと、総理だって思ってるさ」
にやりと笑みを浮かべた口元から滑り出た言葉の凶暴さに息を飲む。
父は、いつか政略結婚の道具にできると思って、私を引き取ったの?
「──黙れッ!」
硬直する私の目の前で、悠が篤志さんの胸ぐらをつかんだまま、にぎりしめた拳を振り上げた。