強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
ああ、そうだっけ。昔のアニメを思い出している場合じゃなかった。
ここは、私、藤沢霧子と彼、八乙女篤志との婚約披露パーティーの会場だった。
婚約宣誓の言葉を述べ、記念品の婚約指輪を左手の薬指にはめられたけれど、まだ実感がない。
私はどこか他人事のように、目の前で繰り広げられる宴を傍観していた。
「すみません」
とりあえず謝るけど、篤志さんはぼそぼそと私を非難し続ける。
「僕が贈ったネックレスはどうした」
「真珠のアレでしょ。あまりに素敵でもったいなかったから、まだしまってあるんです」
「それじゃ意味がないじゃないか。この重要な場所で、キミにつけてほしかったのに」
たしかに今胸についているネックレスは、鎖もトップの宝石も古ぼけていて、デザインも流行遅れであることは、誰が見ても明白。
下手すれば、子供向けのチョコレートの箱についているおまけの方がクオリティが高いかもしれない。
それでもかまわない。これは、私にとって大事なものだから。
重要な場所だからこそ、これをつけてきたかったの。