強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「へっ、ちょろいな」
く……黒い! この人、やっぱりときどき黒―い!
「悠って、本当は悪いやつだよね」
並んで体育座りしていたけど、ちょっと距離を置こうっと。
そうやっておしりでにじりにじり遠くへ行こうとすると。
「そんな悪いやつに惚れちゃったのは誰だ?」
さっと長い腕で肩を抱かれた。目の前に悠の顔が近づく。
あっと思う暇もなく、次の瞬間には唇に何かが触れた。
それが、悠のキスだと気づくのに、時間はかからなかった。
そっと触れるだけのキスをして、悠は顔を離す。
その顔は、にやりと不敵な笑みを浮かべていた。
「うう~……」
こんな悪いやつに惚れちゃったのは、間違いなくこの私。
「やっと二人きりになれたね、霧子」
はっ。そ、そういえば……。
周りは真っ暗で、窓も何もない。もちろん、私と悠以外は荷物の入った段ボールしかない。
「ちょ、ちょっと待って」
ウサギのようだった彼の目が、獲物を捕らえようとする狼の目に変わっている。