強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「しばらく寝よっと。昨夜から、ろくに寝てないんだよね」
たしかに昨夜は大変なことがあって、そのあと事情聴取、そのあと逃亡準備じゃ寝る暇もなかっただろう。
「……あ、良い枕発見」
「え?」
突然ごろりと転がった悠が、私の膝に頭を乗せてきた。
これって、いわゆる膝枕?
「ふかふかだ~」
痩せてなくて悪かったな。
とは思ったけど、どかすのも可哀想でそのままにしていると、すぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
「あらら……」
こうして寝てしまうと、無邪気な子供のようなというか、何と言うか……天使だな。
昨夜敵と乱闘になった際にできたと思われる口元の傷が、少し赤く残っている。
そっとまぶたにかかっている前髪を分けると、おでこにもうっすらと、古い傷跡が残っていた。
今までは傷を負ってばかりだっただろうけど、もうSPを辞めたんだ。
これからは、彼の体にも心にも、ひどい傷がつくことがありませんように。
安らかな悠の寝顔を見ながら、そう祈った。