強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
覚悟を決めて踏み込んだラブホテルは、ちょっとさびれていた。
端の方がはがれた壁紙。しみ込んだタバコのにおい。
特に特徴のない、ビジネスホテルとあまり変わらない部屋には、当然大きな一つのベッド。
どこが悪いというわけではないけど、全体的に古ぼけた感じを受ける。
「お腹が空いたね。ルームサービス頼もうか」
キャリーケースを部屋の隅に置き、冷蔵庫の上にあったルームサービスのメニューを取る。
すると、にゅっと背後から手が伸びてきた。
「うん。後でね」
私の手からメニューを奪った悠は、それを置くと、ぎゅっとそのまま私を抱きしめた。
「それより俺、先に霧子を食べなきゃ。限界。爆発しそう」
密着したまま耳元で囁かれ、心臓が震える。
「無記名で済むから、泊まるんじゃないの」
「そうだよ。どこに泊まっても霧子をいただくなら、無記名のラブホの方がいいでしょ」
なるほど……って、おい。どこに泊まってもすることはするつもりだったのね。