強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


覚悟を決めて踏み込んだラブホテルは、ちょっとさびれていた。

端の方がはがれた壁紙。しみ込んだタバコのにおい。

特に特徴のない、ビジネスホテルとあまり変わらない部屋には、当然大きな一つのベッド。

どこが悪いというわけではないけど、全体的に古ぼけた感じを受ける。


「お腹が空いたね。ルームサービス頼もうか」


キャリーケースを部屋の隅に置き、冷蔵庫の上にあったルームサービスのメニューを取る。

すると、にゅっと背後から手が伸びてきた。


「うん。後でね」


私の手からメニューを奪った悠は、それを置くと、ぎゅっとそのまま私を抱きしめた。


「それより俺、先に霧子を食べなきゃ。限界。爆発しそう」


密着したまま耳元で囁かれ、心臓が震える。


「無記名で済むから、泊まるんじゃないの」

「そうだよ。どこに泊まっても霧子をいただくなら、無記名のラブホの方がいいでしょ」


なるほど……って、おい。どこに泊まってもすることはするつもりだったのね。


< 211 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop