強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
きっと寂しかったのであろう悠の子供時代を思うと、胸が痛くなる。
表面的に仲良くする友達はいても、本当に彼の問題を一緒に理解しようとしてくれる人はいなかったんだろう。
「でもお前は、直視してくれたんだ。この傷を」
「悠……」
「それだけで、嬉しかった。今までのことが、全部報われたような気がしたんだ」
私、そんなにすごいことしていない。
本当に痛そうだったたから、そう口にしただけで。
返事をしようと開きかけた唇を、悠の唇がふさいだ。
悠、私もね、嬉しかったよ。
誰も必要としてなかった、ひょっとしたら自分自身でさえ見捨てかけていた私を、好きだって言ってくれた。
まさか、本当に連れて逃げてくれるなんて、思わなかった。
自分のためにすべてを捨ててくれたあなたになら、私の全てを奪われてもいい。
この心は既に、初めてあなたに会ったあの夜に、奪われていたのだから。