強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
やめさせてもらえませんか
次の日。
目覚ましも鳴っていないのに、目が覚めてしまった。
ぼんやりする頭で、目元をこすっていると……。
「霧子、おはよう」
「わあ!」
誰かの息が頬にかかったので、びっくりして飛び起きる。
ベッドの脇を見ると、大西さんがかがんだままにやにやと笑っていた。
ええと、どうして大西さんがここにいるんだっけ?
だんだんと昨日のことを思い出し、やっと納得した。
そうだ、この人は私の警護をするため、ここにいるんだ。
今日は学校に行かなくていいんだ……。
彼は昨日着ていたスーツのままで、立ち上がる。ネクタイは外されていた。
「コーヒーでも飲む?」
「あ、いいです、私がやります。大西さんは休んでいてください」
私の警護のため、彼はお風呂にも入っていないし、眠ってもいないようだ。
大きな目の下にはうっすらとクマができている。髭も少し伸びていた。
少女漫画のヒーローみたいな見た目のこのひとも、ヒゲなんて生えるんだ……。当たり前のことなのに、意外なものを見た気がしていた。
「“大西さん”じゃなくて、“悠”」
「えっ?」
「呼び捨てで大丈夫だって」