強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
好きでもないけど、嫌いでもない。
婚約はしたけど、八歳年上、三十四歳の篤志さんと私の間に、恋愛関係はない。
ただ、親が勝手に勧めたお見合いの席で、彼が私を気にいったというだけ。
だけどそれは、実際はお見合いなんかじゃなかった。
親同士の間で勝手に決められた、いわゆる政略結婚というやつ。
私は最初から、彼と結婚することを決められていたのだ。
父は現在、内閣総理大臣を務めている。篤志さんの父も同じ政党の副幹事長。彼らの派閥の絆を深くするために、私は利用されようとしている。けれど。
「ただ、まだあなたのことを知って間もないから、戸惑っているだけ」
彼はまだ若いのに国会議員で、顔が整っているので、世のおばさま方に人気があるみたい。
将来有望。顔も悪くない。背だって高い。家柄だって確かなもので、人柄もそんなに悪い人だとは思えない。まだ数回しか会ったことはないけど。
どうせ結婚をするなら、こういう人なら間違いないと思った。父の顔も立てられるし、私に拒否する意思はない。
恋愛感情はまだないけれど、なまじそんなものはない方が、結婚はうまくいくかもしれない。
だって、愛情なんていくらあっても、いつかは冷めてしまうものでしょう?