強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


「そう。それならいいけど」


篤志さんは安堵したような表情を見せる。

ちょっと出ている尖ったあご、小さな唇、真っ直ぐな眉の下の、まつ毛の濃い瞳。

大丈夫。きっと私は、この人を好きになることができる。できるはず。

退屈で仕方なかった婚約披露パーティーも、いつかいい思い出になるはず。

そうやって一生懸命自分に言い聞かせていると、ふっと視界が暗くなった。

びっくりして見上げると、目の前には篤志さんの胸が。


「戸惑うのは仕方ないよな。でも、僕たちは早めに、もう少しお互いを知る必要がある。そう思わないか?」

「ええ……その通りだと思います」


反射的に後ずさり、距離をとろうとする私の肩を、篤志さんの手が捕らえる。


「今夜はこのまま、二人で夜を明かさないか」

「え……?」


ちなみにここは彼の寝室兼、控室としてとった部屋。
私が寝るための部屋は、別にとってあるのに……。


「お、お話なら、上にあるバーに行きませんか? ここにはお酒も、つまむものも何も……」

「いらないよ。キミさえいればいい」


そんなセリフを吐くと、彼は突然私を抱きしめた。


< 5 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop