強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
それは、派閥の中で私をもらってくれるのは、という意味でしょう。まるで、この世のどこにも嫁ぎ先がないように言わないでほしい。
地位のある人たちに限って、たとえ正式に養子に入っていようと、愛人の子なんて嫁に欲しいとは言わないだろう。
たとえ父が隠していても、そういうことはどこかからか漏れているもの。
「でも、今のままだと篤志さんにも、篤志さんのご家族にもご迷惑をかけることになりかねません」
そんなことになったら、派閥の絆を強めるという、この政略結婚の目的にヒビが入ることになる。
そう思ったのだろう。父が、ぐっと顔を歪めた。
「いや、その心配はない。俺や俺の家族は、一流の民間SPを依頼することにしたから」
篤志さんがさらっと言う。
ちっ、余計なことを……。
一般の議員や民間人には、普通は警視庁のSPがつくことはない。
だから民間SPを雇ったのはわかるけど、わざわざ『一流の』をつけるところが嫌らしい。