強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「ううむ……けれど、それでも安全とは言い切れないし……。どうだ篤志くん、一旦婚約を破棄したふりをして、ほとぼりが冷めたころに仕切りなおすと言うのは」
父が妥協案を出す。
「そうしたらまたそのときに、同じような事件が起きますよ」
篤志さんがもっともな反論をした。
「そうだよなあ……。とにかく、どうするにしても、ここにいる者だけで決めることはできない。八乙女さんたちにも相談してみないと」
八乙女さんたち、というのは篤志さんの両親のことだろう。
うう……やっぱり一度進んでしまった話を白紙に戻すのは、簡単じゃない……。
「お父さんは、私の命より、派閥の方をとるの?」
さすがに泣き真似はできないけれど、じっと父を見つめる。
「う……そう言われると……」
父は明らかな困惑の色を表情に現す。仕事では絶対に見せないであろう表情だ。
もうひと押しか。そう思ったとき。