強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「なんてことを……!篤志さんに謝りなさい!」
背後からつかつかと歩いてくるヒールの足音がした。
振り向くと、義母が私の顔に向かい、手を振り上げていた。
殴られる。そう思い、とっさに腕を顔の前に上げた。そのとき。
──ぱしっ。
振り下ろされる手を素早く受け止めたのは、私ではなく、悠だった。
「なによ、離しなさい。SPの分際で、私に触らないでっ」
「落ち着いてください。彼女を殴って何になるんですか」
悠は優しく言うと、そっと義母の手を離した。
「さあ、行きましょう総理」
秘書の声が聞こえ、ハッと振り向く。
二人に背中を押された父の姿はもう、部屋の外に消えてしまっていた。
バタン、と外から閉められたドアが乾いた音を立てた。