強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「大西、警護には税金が使われるんだぞ」
高浜さんがたしなめるように言う。
「総理の給料だって、税金ですよ。経費で下りない分は、あちらに請求しましょう」
「何を言ってるんだ」
高浜さんが真面目に返すのを聞いて、悠はくすりと笑った。
「じゃあ、常識の範囲内で泊まれるホテルに行こうか。気分転換って大事だよ」
たしかに、気分転換はしたいけど。
「なら、お前の部屋はどうだ大西」
「えっ?」
「俺も経験があるが、さすがにSPの自宅まではテロリストはやってこなかったぞ」
つまり、高浜さんは以前、自宅に警護対象者さんを泊めていたことがあるってことだよね。
悠の自宅って、どんなふうなんだろう。植物がいっぱいあるって言ってたっけ。
「そうでしたね。でも、うちはちょっと」
ふと見た横顔は、困ったように眉が下がっていた。
悠のこんな表情、見たことない。
なんでも笑って受け入れてくれそうな彼が、自宅にマルタイを入れることは拒否……。
心のどこかで、ちょっとがっかりしている自分がいた。