強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「藤沢さん、藤沢さん」
……んん、誰……?
知らない男の人の声が聞こえる。
「朝ですよ、藤沢さん」
朝?
ぱちっと目を開くと、目の前には、まつ毛の長い、まるで王子様のような顔をした男の人が。
整った顔に斜めにかかる前髪が、私の頬にかかりそう。
もしかして、本物の王子様?
今までのことは全部悪い夢で、王子様のキスで目覚めた私は、一緒にお城に帰る……なんて、そんなわけないか。
「どなた?」
「SPの新城です。深夜番でしたが、そろそろ交代の時間なので」
はて……SPの新城さん。
のっそりと起き上がって、周りを見回す。
ブラウンの絨毯が敷き詰められた床。
自分が乗っているベッドのシーツは光沢のあるワイン色で、全面の壁には大きな液晶テレビ。
左手を見ると、白いソファに黒いテーブル。
その裏には開放的なバルコニーに続く大きな窓。そこから東京のパノラマが見えた。
空は青く、晴れ渡っている。