強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


彼は仕事が忙しく、まだ二人きりになる時間が少ないだけ。

ゆっくりと理解していけばいいと思っていたのに、突然あんな展開になるなんて。

あのときかわすことができなかったら。相手がもう少し、強引だったら。

想像すれば、ぞわりと肌が粟立った。


「どうしよう……生理的に、合わない」


それは、女性特有の感情。

どんなに良い人であろうと、一度『生理的に無理』だと感じれば、世間的にどんなプラスポイントがあろうとも、絶対に『無理』であることは変わらない。

生涯の伴侶となる人物からキスを受けても、抱擁を受けても、ときめくどころか、気持ち悪いと思ってしまった……。


がっくりと、その場に膝をつきそうになる。


「お母さん……私、間違えたのかな」


首にかけられていた、古いネックレスに手を触れた。

そのとき。

ぐいっと、後ろから何者かがものすごい力で私を抱きしめた。


「きゃっ……う……」


一瞬、篤志さんかもと思ったのだけど、どうやら違うみたい。

その太い腕は片方で私の身体を拘束したまま、もう片方でぎりぎりと、私の首を圧迫してくる。

苦しくて、声を出すことすらできない。


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