強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
生理的な涙がにじんだ視界に、黒っぽいジャンパーのようなものを着ている袖だけが写った。
なに、これ……私、死ぬの……?
「おいっ、何をしている!」
気を失いかけた耳に、かすかに、男の人の声が聞こえた。
そのおかげか、首を絞めていた腕がゆるむ。
「手を上げろ!」
必死に息をしながら、声のする方を見ると、10メートルほど先に、スーツを着た男の人が立っていた。
どうやら、ピストルをこちらに向けているみたい。
「ちっ」
相手の男は舌打ちすると、私からあっさりと手を離した。
「待て!」
ピストルを持った彼の後ろから、別の影が飛び出す。
たくさんの足音が、後ろに遠ざかっていく。
一方私は、こわばっていた全身から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになっていた。
「おっと」
こちらに駆けてきた男の人が、咄嗟に私を支えてくれる。
まるで、恋人を優しく抱き寄せるように。
「大丈夫ですか?」
顔を上げると、その人は微笑んだ。