飛べない竜と詩えない妖精
白銀の降る森
繰り返し見る夢がある。



“ねえ”



誰かが優しく語りかける。



“ねえ、あなたは一体誰のために、飛びたいの?”



泡沫の眠りから少年が目を覚ます。



森は白銀に覆われ、白銀を纏った木々は宝石のように煌めきを放っている。真冬の森には普段誰も近づかないが、幻想種によってはここは楽園である。



「またあの夢か」


白銀に包まれた不思議な夢。いつも同じ言葉で語りかけ、そして目が覚める。睡眠が短くても問題ない躯(からだ)ではあるが、さすがに疲れる。


「……いるわけないだろそんなの」



少年は天を見上げ、哀しげに嘆いた。


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