飛べない竜と詩えない妖精
以前から祭りには一切参加したことはない。人がたくさん集まるにぎやかな場所は昔から苦手だ、注目されることを自分は望んではいないのだから。


「今年も参加しないの?」

「……さあな」


ふと思い浮かんだ少女。きっと好きだろうなと思うが、万が一誘われたとしても断るつもりだ。直樹は今年も変わらないんだなと少しだけ残念そうに苦笑いをする。



……もしも飛べたなら、こんなに卑屈にならずに済んだのだろうか。


竜の姿になっても飛べないなんて滑稽だ。立派な美しい翼があっても、空を飛べない。


冬が終わり、やがて春がくる。



……オレにも訪れるのだろうか、やさしい春が。




< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop