飛べない竜と詩えない妖精
案内された部屋は寮の最上階。扉からもう、普通とは違う。普通はカギで開けて入るのだがーー。


『あらマスター遅いお帰りですわね。あんまり遅いと開けませんわよ』

「な、なるべく善処するから」

『では急いでお部屋を暖めますわ』

「ありがとうアイラ」

青年が苦笑する。

「寮の最上階と学園の特別な部屋は個を持っていて、全部会話で操作できるようになっているんだ。ちなみに僕のはアイラという女性型だよ」

心春はすごいですと小声で呟く。確かにこれはすごいと思うがーーうるさそうだ。蓮冬はとりあえず曖昧に頷く。


中は広々とした空間で、全体的にミントグリーンで統一されている。好きな色なのだろうか。蓮冬の思いが通じたのか、青年が教えてくれた。

「占いのラッキカラーがいつも同じって理由だけ。本当に好きな色は銀色だしね」


キッチンでは青年が慣れた手つきでお茶を用意している。テーブルの上には色々な缶が並べられ、瓶もいくつかある。お茶を飲むだけでここまでしなくてはいけないのかと蓮冬は思った。

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