飛べない竜と詩えない妖精
それからお茶をご馳走になって、世間話をして、帰宅する頃には少し打ち解けられたように思う。帰り際ようやく青年のことを思い出した。



「東宮周(とうぐうあまね)――さん?」


幻想種と人間の調整役。日常の相談役といったことをしている、確か八咫烏(やたがらす)の烏丸瀬七(からすませな)がいいですね上からあれこれ指図できる人って、などと毒を吐いていた。


周は苦笑いをする。そういえば何も名乗っていないことに、いまさら気がついたからなのだが。


「ごめん、すっかり忘れていたよ。あらためて名乗らせてもらうと――僕は東宮周。ここ学園都市の大方任されてるけど、立場的にはみんな
とそんなに変わらないから気軽に接してくれ」



爽やかな甘いマスク。これは人気があるのも頷ける。心春は終始上機嫌だった、いい人という認識のせいかもしれない。

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