隣の彼は契約者

03*2



 頭がショートしていたせいか、気付くのに一分はかかった気がする。
 画面を見たまま違和感のある頬に触れると何かが取れ、拾って見てみると黄色の付箋。

 それに文字はないし鳥の絵もない。
 代わりに怪獣ゴ●ラのような被り物をした子が描かれていた。ついでに怒った顔で口から火を噴いている。理解するよりも先に椅子から立ち上がる音がし、背後から伸びた手に残りの書類を奪われた。


「なんだ……そんな難しいものじゃないじゃないか」


 淡々と、それでいてどこか苦笑しているようにも聞こえる。
 すぐ傍に感じる気配に振り向くことができないでいると、隣から椅子を引く音がした。引き戻された意識に慌てて見ると、先輩の手にはさっきまで自分のデスクにあった書類。反対の手は落としたばかりのパソコンの電源を入れていた。


「先……輩?」
「俺も約束があるが、待ってもらえる相手だ。引き受けてやるから行け」


 珍しくハッキリとした声で言われ、いっそうわからなくなる。
 自分も約束があるのになんで私なんかの用事を優先してくれるのか。この付箋はなんなのか。約束の相手とは誰なのか。
 様々な疑問に収拾がつかないでいると呟きが耳に届く。


「……礼だ」
「え?」



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