隣の彼は契約者
04*5
彼と鉢合わせたから?
彼が絵を描いてると知ったから?
彼を題材にした話を書いたから?
彼……だから?
考えるだけでも胸が苦しくなる。
理由は色々ありすぎてわからないが、今は怖い。
大橋さんに聞けば私が何を書いてるかわかる。
聞かなくても『まひろ先生』と紹介されてしまったのだから、絵師として小説サイトを知っていれば見つかってしまうかもしれない。それでもし読まれでもしたら……自身のことだと知られたら。
「ど、どうしよう……」
冷水を浴びたように身体が震えはじめる。
慌てて本を置くと、抱きしめたイルカのクッションに顔を埋めた。
小説の“雅”と“相沢先輩”は見た目こそ似ているが内面は違う。
そう否定できるのに、彼をモデルにした事実がある限り罪悪感が勝ってしまう。
何より彼と会わなかったらそのまま本にしようとしてたなんて……バレなければいいかと少なからず思ってしまった罰が下ったのだろう。
「あ、ダメだ……もう寝よう」
考えれば考えるほど自滅フラグしか立たず、さっさと着替えて化粧落として寝ようと起き上がった。明日は土曜日。会社もなければ予定もない。
ガッチリと引き篭もって考えよう……。