隣の彼は契約者
01*2
「あ、更新されてる!」
売店で買い物を終えた私は、つい喜びの声を上げる。
それが少し大きかったせいか周りの目が集まり、慌てて壁際に寄ると携帯を凝視した。それはもう仕事以上に真剣な目で。
(うそっ、ここで終わるの!? ちょっ、早く続き読みたい!)
声を漏らさないよう口元を押さえるが、興奮は治まらない。
冒頭から読み直し、続きのページがないことに唸ってしまうのは文字が並んだ画面。お堅い新聞などではない、ひとつひとつの文字が艶やかに見え、世界を想像させる物語。
携帯小説だ。
無料で読める小説サイトには、SFファンタジーからホラーまで様々なジャンルが揃い、中でも根強い人気を誇るのが恋愛。漏れず私も熱中している一人で、王道でもご都合主義でも、素敵な人と出会い結ばれる過程はハラハラドキドキする。
ただ、プロだけでなく一般の人の投稿できるため、いつ更新されるかわからないのが難点。その分、種類は豊富だし、更新された時の嬉しさは桁違い。出勤前、昼休み、帰宅後。時間さえあれば更新チェックするのが日課で、仕事という疲れを幸せに変えてくれる素敵な読み物だ。
でも、今の私はそれだけが楽しみではない。