隣の彼は契約者
05*5
慌てて足元に気を付けながら向かうと、デスクに突っ伏した相沢先輩がいた。
「先輩、死なないでっ!」
「勝手に殺すな……」
二台のパソコンの明かりだけでも、頭を起こした先輩が不機嫌なのがわかる。
でも眼鏡を外したまま頬杖をついているのが珍しいせいか、魅入ったように動けなくなってしまった。その隙に眼鏡をかけ直した先輩は伸ばした手でカップを取る。我に返った。
「ちょっ、なんで電気消し……まさか停電!?」
「アホか。俺が消したに決まってるだろ」
「アホですか!」
真面目な顔にアホ返しする。
雷も鳴ってないし、パソコンも切れてないのだから当然彼が消したのだろう。でも普通消すなら反対。少なくとも私はそうだと抗議すると、カップに口を付けたまま眉を顰められた。
「疲れた時はパソコンの明かりだけがいいんだ……」
「それもっと目が悪くなりますって まさかそのまま絵とか描いてませんよ……ね」
口走ってしまった内容に気付くが遅かった。
カップに口をつけたまま見上げる目は何かを探っているようにも見え、少しの間が空く。離れた唇が動いた。
「今のところそっちの仕事は入ってないが、“まひろ先生”のを請けようと思っている」
「えっ!?」
突然の名前に身体が跳ね、お盆に乗せていたカップからコーヒーが零れる。