隣の彼は契約者
06*2
カップから唇を離した先輩は小首を傾げた。
「そういう羞恥プレイが好きな主人公じゃなかったか?」
「関係なく恥ずかしいですよ! 先輩だって自分の絵が会社全部のパソコントップになってたら嫌でしょ!?」
「想像しただけでも退社したくなるが、誰も俺のとは思わないだろ」
顔を顰めた割りに、さほどダメージは見受けられない。
確かに“みやび ふみ”を知っていても彼と結びつく人は皆無だろ。私だっていまだに信じられないぐらいだ。
言い返せず顔を伏せていると、デスクにカップを置く音がした。
「その点お前の話は舞台が総務課。会社構造もウチと似ているから、バレるヤツにはバレるかもな」
淡々と落ちてくる言葉が刺のように痛い。
明かりから隠れるように丸めた身体を抱きしめる。
「だから……お断りを……」
「なぜそうも卑下に扱う?」
不機嫌な声に、別の意味で震える。
恐る恐る顔を上げれば、怪訝そうに見下ろす目があった。
「何を怖がってる? 会社を題材にしたことか 書いてることが俺にバレたからか?」
間を置くことなく訊ねられ動悸が激しくなる。
それは訊ねられた内容にではなく、訊ねる彼に対して鳴る音。
「なんでもいいが、そんなの気にしてたらキリがないぞ」
「え?」