隣の彼は契約者
01*3
「ひゃ、感想だ!」
部署に戻る途中、また上げてしまった声を慌てて手で押さえる。
速くなる動悸をなんとか堪え、携帯画面に映る小説サイトのマイページを凝視した。そこには赤の文字で『感想が書かれました』と表示され、震える手でクリックする。
『今話の雅くんもカッコ良かったです!』
『続き楽しみにしてます! まひろ先生頑張って!』
短いものでも嬉しい感想に、身体が小刻みに震える。
そう、実は私も『まひろ』のハンドルネームで小説投稿しているのだ。
内容は新人社員の女の子とイケメン先輩男のオフィスラブで、タイトルは『隣の彼との秘密』。何を隠そう脚色した自分の会社を舞台にし、相手男性の名前は『雅』。
読み方は違うが、言うまでもなく相沢先輩をモデルとしている。当然秘密だが。
もっとも主人公は美人で長身のツンデレ。
同じ茶髪のショートボブでも、いたって平凡で身長も一五十ちょっとしかない私とは正反対の女の子。唯一『ポジティブだが精神面は弱い』が似ているかもしれない。
最初は好きな作品の更新がなくてはじめた素人同然のお話。
それでも好きだと言ってくれる誰かがいることが嬉しくて、今では読むことと同じぐらい夢中になっている。
「それにしても雅、人気あるなー。クールで俺様っていいのかな」
「俺が……なんだ?」
「ひゃっ!」