I love youを日本語に
「キャッ」
小さな悲鳴とともに吉村は俺との距離をより詰めてくる。
でも俺はそれを振り払わない。
もちろん、こんなことは本意ではないし、
吉村を期待させるだけになる可能性を思えば振り払うという行動が妥当だと思うし、俺自身そうすべきだとも思う。
でもこれはユウを試すのに絶好のチャンスだ。
ユウが再び嫉妬してくれれば、
俺にとってはラッキー以外のナニモノでもないし、
ユウは自分の本当の気持ちに気付ける。
こんな機会、逃す手はない。
無理無理無理
と小さな声で呟きながら首を横に振る吉村を引っ張るような形で先へと進んでいく。
「……ひゃあっ!!!」
吉村が今日一番の悲鳴を上げる。
どうやら後ろから肩を叩かれたみたいだ。
「わたし…キレイ?」
振り返るとマスクをした長い髪の女。
ユウだ。
ドクッドクッと自分の鼓動が聞こえてくる。
「わたし、キレイ?」
ユウはゆっくりとマスクを取り、大きな口を露わにする。
そこでユウは初めて吉村から俺のほうへと視線を向けた。
ばっちり、目が、合う。
「………トシ」
どうしてだろう。
隣ではとんでもない声量で叫び声をあげている吉村がいるのに。
俺にははっきり、聞こえたんだ。
ユウの悲しげな俺を呼ぶ声が。