I love youを日本語に
なんで。
なんでわたしが、
トシに、
嫉妬…なんて。
「………ユウ」
あれだけ周りにたくさんの人がいたはずなのに。
気付くと人はまばらで。
あと少しで階段を下りきる、
そんなところでトシに捕まってしまった。
トシはわたしの手首をギュッと握って逃げられないようにする。
少し、痛かった。
痛かったけど、でも振りほどかなかった。
どうせ捕まることは分かってたんだ。
わたしは昔から追いかけっこだけはトシに勝てたことがない。
「なんで」
気付くと口から出ていた。
何を言おうと思ったのか自分でもわからない。
トシに捕まれた手首を見つめたまま、ほんの少しの時が流れた、
「さっきのは、」
トシが口を開く。
「違う」
咄嗟にトシの言葉を遮っていた。
でも、違うと思った。
トシから言い訳を聞きたいわけじゃない。
わたしが逃げ出したのは、自分に戸惑ったからで。
だから、
「なんでわたし、トシに…「あれ、ユウ?」
嫉妬なんてしたんだろう。
ふと名前を呼ばれ我に返る。
良かった。
ヘンなこと、言うところだった。
わたしの名前を呼んだその声を聞いて、
手首を掴んでいたトシの手が離れていくのが分かった。