I love youを日本語に





「ユウ、おはよう」


朝のホームルームを終え、早速片付けが始まった。

束ねられた段ボールを抱えゴミ捨て場まで向かっている途中、その声が聞こえ、わたしは足を止めて振り返った。



「おはよ、ナオくん」


もしかしたら少し、不自然な笑顔だったかもしれない。


「重そうだな、手伝おうか?」

段ボールを見ながらナオくんは言う。


「ううん、大丈夫。

これでも野球部のマネージャーだよ?

普段からいっぱい重いもの運んでるから力、あるんだよ!」


わたしはまた、笑顔を作る。

たぶん、さっきよりはまだ自然なはず。


「そっか、そうだよな。

呼び止めてごめんな」


わたしはううん、と首を横に振る。


「じゃあ、行くね」

わたしは前へ向き直り、歩き出そうとする。


「ユウ」

そうすると呼び止められて、再び振り返る。


「ナオくん?」

さっきまで2メートルくらい離れたところにいたはずのナオくんが目の前にいて。

そして大きな手のひらがわたしの頭の上にポンっとのる。



「もう、大丈夫か?」


その、あまりに優しすぎる声で放たれたたった一言で

わたしの胸はズキズキと痛み始める。


「うん、大丈夫」

ナオくんを見上げ、ニコッと笑う。


「なんかあったら言えよ。」

うん、と頷く。


それを確認したナオくんはじゃあ、またな。そう言って行ってしまう。


段ボールを抱えなおし、歩き始める。


涙が溢れそうだった。

段ボールに額をつけて、それをぐっと堪える。






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