I love youを日本語に





学祭から2週間が経とうとしていた。


時間が解決してくれる。

とはよく言ったもので。


本当にそうだと、この2週間で痛感した。


最初は美帆の前で無理やり元気に振舞って、

ナオくんの前でいっぱい作り笑いをして。


でも、2週間も経つと気持ちの整理がつくというか、

考えても仕方のないことだと諦めがついたというか、

いろんなことを考える、ということを放棄した。


そうすると気持ちが軽くなって、

二人の前で自然に振舞うことができるようになった。


でも、トシに対してそれができるようになるには少し、時間が必要だった。


トシを避け続けて1週間。

その日も早く家を出たわたし。


でも


「ユウ」

玄関を開けるとそこにトシがいた。


しかも、腕を組んで、最高に不機嫌な顔をして。



「あ、おはよう、トシ。

早いね」


あはは、と乾いた声で笑って、自転車を奥から引っ張り出す。


「久しぶりな感じするね」


「……」


トシは何も答えてくれない。



「いやー、最近忙しくって」

だから仕方なく、ひとりで喋る。


「練習も朝早いし、終わるのも遅いし、だから家に帰ったらすぐに寝ちゃって。」

この1文に、朝わざと早く家を出ていること、帰りをわざと遅くしていること、カーテンを開けなかったこと、すべての言い訳を詰め込んだ。


「トシは今日どうしたの?

早くない?」


「……」


はい、無視。


なんだ。

なんなんだ、トシ。








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