I love youを日本語に
「…直斗せんぱいっ!」
その日の練習後。
ひとり居残りで素振りをしている先輩に声をかける。
心臓のドクドクという鼓動が耳に響く。
「おう、柴田。お疲れ」
そう言って額に汗を浮かべ、はにかむ直斗先輩。
トクンと心臓が大きな音をたてる。
そう、大丈夫。
わたしが出した答えは、間違ってなどいない。
「昨日の…」
「ああ…うん。
考えてくれた?」
先輩はバットを置いて、わたしと真っ直ぐに向き合う。
街灯の光だけがわたしたちを照らしていた。
「…こんなわたしでよければ、よろしくお願いします」
なんだかとんでもなく恥ずかしくて。
頬が熱くなる。
直斗先輩を真っ直ぐ、見ることができなかった。
「…よかった」
その声に顔を上げると、直斗先輩は両手で顔を覆っていた。
「せん、ぱい?」
「いや、嬉しくて。
俺…泣きそう」
そう言った直斗先輩は手を下ろして。
そうすると先輩の目は少し潤んでいた。
それを見てなんだか嬉しくて、照れくさくて。
目が合ってふたりで笑いあう。
…やっぱり、間違ってない。
間違ってないよね、トシ。