I love youを日本語に
部室で着替える先輩を外で待っていた。
「お待たせ」
そう言って部室から出てきた先輩を見てふと、思う。
この人がわたしの初めての彼氏、なんだ。
”彼氏”という響きが慣れなくて、くすぐったい。
「帰ろっか、ユウ」
ユウ。
今までは柴田、だったのに。
名前で呼ばれた。
ただ、それだけのことがこんなに嬉しいなんて知らなかった。
横に並んで先輩の顔をこっそり見ると、頬がほんのり赤くなっていて。
「恥ずかしいなら無理に呼ばなくてもいいのに」
なんて思わず言ってしまう。
「う、うるさいなあ!
ずっとそう呼べたらな、って思ってたんだよ!!」
さっきよりも赤くなる先輩の顔。
今までカッコイイ姿しか見てこなかったけど、
先輩のこんな可愛い姿を見られるなんて。
思わず笑ってしまう。
「笑うなよー!」
先輩はそう言ってわたしの髪の毛をくしゃくしゃにする。
今までとは違う、帰り道。
彼氏と歩く道はこんなふうに輝いているんだと知った。
トシ。
美帆の力を借りてしまったけど。
でもわたしはわたしなりにちゃんと考えて導いた結論だよ。
だから、はっきりと言える。
直斗先輩と付き合う、という結論は間違ってなど、いない。