星になれたら
「いっしょに、


病院にいこう。」




「…いや」



「ムリにでも連れてくからな!」


僕は亜矢の細い腕を握ってズルズル引っ張っていく。


亜矢は幼い子どものように体重を全部かけて反抗したが、小さな亜矢は軽くて全然意味がなかった。




「いやぁぁ!!



…ライブ、ライブあるもん!」



「今のままだったらどうなるか分かんないんだぞ!?」



「病院行ったってどうなるか分かんない!」


「骨髄移植とか、助かる可能性があるなら…かけようよ!」



「…ライブは?」


亜矢は涙をためた瞳でキッと僕を睨む。



「…」



「今度のライブは、死んでも出るもん!」



「じゃあ約束して!」

亜矢は折れそうもないから、僕は作戦を変えた。



「ライブの後…すぐ後に、絶対病院行くって!」



「…」


「約束できる?」


「…」

亜矢はうつむいて考えこむ。


「約束できなきゃ今から入院!」

僕はまた亜矢をズルズル引きずっていく。



「分かった!!分かったから!!!」


半ば強引に僕の作戦は成功した。







-でも、



僕は馬鹿だ。



亜矢の身体は僕が思っていた以上に、


悪くなりつつあったのに…




『ねえ、亜矢…』

君は、
『約束守ったじゃない』

こう言うかな?



でもね、





僕は、

僕が望んでいたのは…












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