俺に溺れとけよ
プールから上がる紡は務さんに駆け寄ると、お兄さんは紡の頭を強く撫でた。

紡は嫌そうにしていたけれど、どこか固かった表情が柔らかくなったように見えた。






「じゃあ…私は先に帰るね」

「え?待ってなくていいの?」


紡と務さんを見て安心した私は、凪と健くんにそう声をかけた。




「うん。私が居ても邪魔だろうから…」


多分。今の紡には私がここにいるってことすら気づいてないし…

久しぶりの兄弟の時間だもんね…じっくり楽しんでもらいたいな。





「そっか。紡には先に帰った事伝えておくから」

「ありがとう。じゃあ」


私な凪達と別れスポーツクラブを出ると、青い空を眺めながらだらだらと家に向かって歩いていた。




もうすぐ高校最後の大会か…

紡…頑張って欲しいな…


陸には悪いけど…

私は今年はどうしても紡に勝ってもらいたい…



あれだけ頑張ってるんだもん…




私は昼下がりの空を見上げながら、


紡の勝利を力強く願った…




何度も何度も…

強く…
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