俺に溺れとけよ
ガラガラ…


すると、診察室から紡が出てきた。

紡は顔に数箇所の切り傷あり、松葉杖をついて私達を見るなり反省したように微笑む。





「紡偉いっ!あんたは自慢の息子よ!美海ちゃんを守ったんだからね」

「当たり前だろ」


べしっと紡の背中を叩くおばさん。

皆紡の無事を安心して微笑む中、私はたまらずにその場から走って逃げた…






「美海!」


紡や凪達が私を呼ぶ声がする…


でも立ち止まれなかった。



泣いてるところなんて紡に見せられない…


一番泣きたいのは紡だもん…








「ハァハァ…」


しばらく走ってやって来たのは、外来患者の広々とした待ちフロア。


夜間の為誰もいないし薄暗く、普段だったらこんな所怖くて1人でなんて来れないけど…

今はそんな事考えられない。



紡に申し訳なくて…

どうしたらいいのかわからない…





タ…

タ……



後ろから足音がして振り返ると、紡がこっちに向かって歩いて来ている。


松葉杖をつく紡の姿…

私は見ていられなくなって紡に背を向けた。
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