俺に溺れとけよ
「土田陸っていうんだ!陸でいいよ。よろしくー」

「よろしくね~」


会ってまだ数十秒だがいい空気が流れた気がした。私達はその流れで駅前にあるカフェに入った。





「ごゆっくりどうぞ」


それぞれ飲み物を頼むと、仕切り屋の陸が話し始めた。



「まさかお前が友達連れて来るとは思わなかったな~こっちの学校では頑張ってんじゃん」

「…まあね」


まだ友達と呼べる人は蒼井くんだけだって陸が知ったら、きっとからかってくるに決まってる。蒼井くんすら友達かっていえばまだ微妙なのに…




「それに蒼井くんすごいイケメンだしね♪もしかして…2人って付き合ってるの?」

「ぶっ!」


近藤さんの言葉に飲みかけのドリンクを思わず吹き出してしまい、陸に「バーカ」と言われた。




「それはないないっっ!とんでもございません!!私なんてそんなっ……」


顔を真っ赤にして否定しまくっていると、隣に座っている蒼井くんが私におしぼりを差出してくれた。




「ありがとう…」


おしぼりを受け取り口元を拭くと心臓のドキドキが止まらなくなる。

蒼井くんが彼氏だなんて…本当にとんでもない事だよ。でも周りからしたら私が男子を連れてきたらそう思ったりするのか…

やっぱり蒼井くんを誘ったりして悪かったかな…





「でも水野さんて男友達がいて羨ましいなぁ。私なんて今の高校にはいないよ~」


近藤さんが頼んだ苺のタルトをフォークで一口サイズに切ると、いいな~いいな~と連発する。




「そんな…全然」

「陸もさ~友達多いけど親しくしてる女の子って水野さんくらいだよね?何で2人が仲良くしてるのか不思議なんだけど~」


口調は明るいけどどこか刺のある近藤さんの言葉に私は苦笑い。

陸の彼女からすれば私なんて面白くない存在だってわかっていた。だから会うのを躊躇していたのもあるんだけど…
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