俺に溺れとけよ
蒼井くん以外の私を含めた3人は、同じ顔をして同時に同じ声を出して驚いた。


私も水泳部に!!?





「いや!それは絶対無理!だって私…泳げないし」

「だから誘ってんだよ」


若干半笑いで意地悪な顔をする蒼井くん。もしかしてからかってる?





「水野ちゃん!お願いだよ!!俺達の為にも水泳部に入ってくれ!」


明るい男子は両手を合わせて私にお願いしてくる。隣で蒼井くんはプッと笑っているように見えた。




「あの…いやっ……えっと…」


困り果ててどうしたらいいのか分からなかった私だが…










「ぷっ、アハハハ…」


その日の夜。食卓を囲んでいると私の家族は夕飯を食べながらひたすら笑っていた。




「美海が水泳部ですってよ」

「アハハハ♪」

「あーおかしい」


お母さんと祖父母がゲラゲラ笑う中、私は煮物の野菜を箸でグサッ刺して口に頬張る。




「私だって好きで入りたいわけじゃないよ!仕方なくなんだからっ」


あの後、結局押しに押されて一旦学校に戻って水泳部に入部させられたんだから。ちょうど相馬さんと行き合って半泣き状態で感謝されたけど…





「でもいいじゃない?もしかしたら泳げるようになるかもしれないし」

「別に泳げなくてもいいよ…ただプールが好きなだけだし」


水に触れてるだけで私は充分幸せなんだから。部活に入ってストイックに水泳に取り組みたいわけじゃないよ…





「でも水泳部のマネージャーとして入部したんでしょ?まだいいじゃない」

「まあ…」


そうなのだ。入部を渋っていた私を見てあのクールな健くんが「ならマネージャーになれば?」とボソッと言ったのがきっかけで、私は渋々入部を決意した。

マネージャーならまだいいかと思ったけど、やっぱり色々大変なんじゃないかな。それに相馬さん怖そうだし…
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