俺に溺れとけよ
その行為に私はキュンとして、散々迷ったけれどおにぎりを作って来て良かったと思った。





「うん!作って来るね!!」


嬉しい!私が作ったものを好きな人が食べてくれるって、こんなに嬉しいことなんだね!





「結構やるじゃない」


蒼井くんが遠ざかると、凪がスッと私の側に寄ってきてコソッと小声で言ってきた。




「ごめんねっ。図々しいかなーと思ったんだけど…」

「ううん。部員の事気遣ってくれて嬉しい!ありがとね」


凪は優しく微笑んだ。私は「うん!」と頷き、部員達とプールから教室に向かった。

高校入学して来た時は誰も友達がいなくていつも1人だったのに、今は違う。蒼井くんとの出会いがきっかけで私の周りが色々変わりつつある…

学校が楽しいと思ったのは初めてかもしれないなぁ。









「タイム測るよー」


その日の放課後の練習も力が入り、部員達はそれぞれ気合いが入っていた。





「水野。タイム計って」

「は、はい!」


蒼井くんにお願いされて、私は慌ててストラップウォッチを持つとプールに飛び込んだと同時にスイッチを押した。

いつもと変わらない綺麗なフォームと、水と一体化してる蒼井くんの泳ぎに惹かれてしまう…




かっこいいなぁ…

かっこ良すぎ…






「…ハァ…何秒だった?」

「あ゛!」


蒼井くんの泳ぎに見とれていて、泳ぎきったのにも関わらずタイムを押すのを忘れてしまった私。





「ごめんなさい!!私ってば…」


泣きそうになりながら何度も謝ると、蒼井くんはキャップとゴーグルを外してクスッと笑う。





「ストップウォッチの使い方わかってるか?」

「多分…」

「次は頼むよ」


優しい口調で言って私を通り過ぎると、蒼井くんはテント下まで行って水を飲んでいた。



失敗しちゃった…でも蒼井くん優しいな…

次はミスしないようにしないと…
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