俺に溺れとけよ
「ねぇ…県大会のリレーだけど順番どうする?」


その日の帰りは県大会の話題になり、水泳部のメンバーと下校しながら話をしていた。みんな帰る方向が一緒ということもあるが、帰りは部員全員で帰るのが当たり前になって来ている。





「うーん…まあアンカーは蒼井で間違いないだろうな」

「だよね!私もそう思う」


部長と凪がうんうんと頷きながら話す。


蒼井くんアンカーなのか…私益々応援しちゃうよ。





「トップバッターは健がいいんじゃないか?タイムは蒼井の次にいいから最初に差をつける為にも」

「うんうん」


そっか…そういうのも決めなきゃいけないのか。

水泳部って結構深いな…個人戦だけじゃなくてチーム戦でもあるんだもんね。





「明日からリレーの練習始めるぞ」


部長と部員達は「おー!」と叫び、道端でメンバー一丸となってやる気になっていた。

それから毎日練習は続き、県大会に向けて本格的に形になっていた。私は毎日疲れきっていたが、初めての大会ということで内心ワクワクしていた。








「ただいまぁ…」


3週間後。期末テスト期間になると部活の練習もなく、学校ではピリピリとテストモードで部員達と触れ合う回数も減り私は何となく落ち込みモード。

学校が終われば凪と一緒に下校してそのまま帰宅コース。蒼井くんとあまり話せない私達のため息は増える一方だった。






「おかえり。お風呂入っちゃえば?」

「はーい…」


キッチンでお母さんとおばあちゃんが夕飯を作っていて、帰って来た私に声をかける。私はカバンを置いてそのままお風呂に入った。


お風呂入って夕飯食べたら勉強しないとなぁ…って言ってもいつもやらないけどね(笑)


そんなことを考えながらお風呂から出て部屋着に着替えてドライヤーで髪を乾かしていると、お母さんが脱衣場を覗き込んで来た。






「電話鳴ってたけど~?」

「え?」


そう言って私にポイとスマホを投げその場から去るお母さん。私は手を止めてスマホ画面を見た。





「ギョッ!」


すると、蒼井くんから一件の着信が入っていた。私は変な声で叫んだ後、すぐに脱衣場から出て2階の自分の部屋に駆け込む。
< 42 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop