俺に溺れとけよ
「悪いな」

「ううん全然!」


今日は学校であんまり見かけなかったから話せて嬉しい!

それに蒼井くんの私服また見ちゃった♪




「これから行くの?」

「そ。健とプール忍び込み。たまにやってるんだよ」

「そうなんだ」

「テスト期間で部活ないから、泳がないと体が訛っちゃって気持ち悪いんだ。スポーツクラブもテスト期間中は入れてくれないし」


あそこの店長っていい人だけど、そういうところめちゃめちゃ厳しいもんね。






「…良かったら一緒に来る?」

「へっ?」


鍵を手渡したあとで蒼井くんに軽い口調で誘われた私は、驚いて一瞬止まる。




「どうせ帰りに鍵返しに来るし。朝渡したら凪がうるさいだろうから…あ、でも明日テストだから勉強とかするタイプだったら…」

「しないです!行きますっっ!!」


こんなの勉強なんてしてる場合じゃないよ!明日のテストなんてどーにでもなれ!!





「良かった。支度来てきなよ。待ってるから」

「…うん!」


私はダッシュで家に入り、水着の上から服を着て荷物をまとめた。





「あれー?ご飯は?」

「いらない!これから友達の家で勉強してくる!」

「あら珍しい~」


夕飯の準備をしているお母さん達にそう言葉を投げ捨てると、私は慌てて玄関でサンダルを履いて家を飛び出した。

外に出ると蒼井くんがスマホを片手にして待っていて、私が近づくとニコッと笑った。





「待たせてごめんね!」

「大丈夫。行こうか」

「うん!」


蒼井くんと肩を並べて歩き出す。学校から帰って来てまだ一時間足らずで、時間的にはまだ夕日が顔を出していて明るい。
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