俺に溺れとけよ
「じゃあ次は口まで水に浸かってみ」

「はーい…」


そっと膝を曲げてゆっくり水に浸かる。




「もっといける?このくらい…」


私の手を握りながら自分も私の目線に合わせて水に浸かる蒼井くん。




「ぶはっ……」


こんなに顔を近づけたのは初めて、私は思わず水の中で息を吐いてしまい若干口に水が入った。




「ゲホゲホッ…」

「大丈夫か!?」


とっさに立ち上がると、咳き込む私を心配そうに背中をさする蒼井くん。




「だ、大丈夫大丈夫!?ごめんね。せっかく教えてくれてるのにこんな事も出来なくて」

「謝らなくていいよ。ゆっくりでいいから。じゃあもう一回やってみようか」

「うん」


蒼井くんはその後も優しく教えてくれて、以前よりも水に慣れることが出来た。







「今日は教えてくれてありがとう。泳ぎがうまいだけあってさすがに教えるのうまいね!」


プールから上がって着替えを済ませた私達は、テント下で雑談中。私は蒼井くんに今日のお礼を言った。




「別に普通だよ」

「今日はあんまり自主練出来なかったんじゃない?」


あれから私の練習ばかりで後半蒼井くんはほとんど泳いでないし…





「たまにはこれくらいでいいんだよ。大会が近いからってあんまり泳ぎ過ぎても良くないし…ただ水に触れていたいだけだから」

「そっかぁ」

「ここまで来ると病気だよな」

「そんなことないよ」


その気持ちはよくわかるもん。私は泳げないけど気持ちだけはわかる!






「お前も泳げるようになればいいな」

「うん!頑張るよ」


帰り道も蒼井くんとの話は尽きない。今日は何だか少しだけ距離が縮まった気がするよ…





「そういえば蒼井くんて誕生日いつ?」


実はずっと聞きたかったこと!

今日はいつもより蒼井くんを近くに感じるから積極的に聞いちゃお。
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