俺に溺れとけよ
「うん…杉野くんもいいフォームですね」

「はい」


健くんもいいタイムを出し部長と川崎くんもなかなかだった。そして最後の種目はリレーで、健くんからのスタートで始まり次に川崎くん、部長、アンカーの蒼井くんへとなり…





「やったー!!!」


うちの学校は見事1位でゴール。2位とのかなりの差を出してタイムも自己ベストを超えていた。

私と凪と林先生は応援席で抱き合って喜んだ。スタート台の近くで蒼井くんたちも喜んでいるのが上から見えて、私は嬉しくて泣きそうになった。





「いやー良かった!僕たちやっぱりすごくない!?」


帰り道。川崎くんが興奮しながら言い、電車の中での会話はもちろん今日の大会のことで盛り上がる。





「俺達もだが…やっぱりすごいのは蒼井と杉野だろ。個人種目でそれぞれ優勝したんだから」

「そうだよね~でもリレーでも優勝したよ?僕たちもすごいんだよ!」


うちの高校の水泳部が賞をもらったのはここ最近ではなかったらしい。きっと夏休み明けは鼻が高いだろう。





「みんな浮かれてんのはいーけど。次は全国よ?もう二週間足らずで東京で全国大会があるの。もっと気を引き締めてよね」


凪が厳しい口調で言うと、川崎くんがしょんぼりして「はーい」と返事をした。隣で部長が励ましてる。


そっか。凪の言う通り次は全国が迫っている…県大会よりももっと強い高校がたくさんいるんだもんね。

でも…蒼井くんならきっと勝てる……


昨日まで県大会のことで頭がいっぱいだったのに、今は全国大会に向けて話が進んでいっている。

勝ち進んでいくにつれてこんなにも緊張するなんて知らなかった…







バシャ…バシャッ……


全国大会2日前。

私は蒼井くんと健くんと3人で夜の学校のプールに忍び込み、いつものように2人の泳ぎを眺めていた。
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