俺に溺れとけよ
「何って大会に出るから来たに決まってんだろ」

「嘘!私もだよ」

「あ?お前泳げねえのに出れねーだろっ」

「違くて私の部活!私水泳部のマネになったってこの前言ったでしょ?うちの学校も今日の大会に出るの」


すると陸は私の後ろの方に目をやってキョロキョロと見渡すと、蒼井くんを見つけニッと笑いながら小走りで近づく。





「よ!俺のこと覚えてるよな?」

「当たり前。この前会ったばっかりだし」

「だよな~」


蒼井くんは立ち上がると陸に笑顔を向けた。ちょうど同じくらいの身長の2人は立っているとすごく目立つ。

これに健くんも加わったら更にすごいだろうな…





「今日…楽しみにしてるよ」


半ば挑戦的な口調で陸はそう言い残すと、じゃあなと言ってその場から離れて行った。


陸の学校も競技に出るのかな…スポーツ校だらここにいてもおかしくないけど。

蒼井くんはしばらく陸の背中を見つめその場に立ち尽くしていた。







「リレーはうちが3位だよ!」

「みんな速かったもん!」


その後競技が始まり、リレーでうちが3位になり私と凪は大喜び。





「優勝した学校との差が少しありましたが…良かったんじゃないですか。よく頑張りました」


先生も褒めてくれた。そりゃあそうだよね!少ない人数でここまでの成績出せたんだもん、すごいよ!





「最後は紡の個人戦ね…」


凪がプログラムを見ながら難しい顔をする。他校の生徒の実力がわからない為、どうなるのかは全然わからない。

蒼井くんなら大丈夫だと信じてるけど…偶然にも陸と蒼井くんの出る回が同じでしかもレーンが隣同士。


陸も友達として応援したいけど…やっぱり私は蒼井くんを…



すると蒼井くん達がプールに入って来て、それぞれ自分のレーンに達スタート台に乗った。

私は応援席から蒼井くんを見つめていると、水泳キャップをつける蒼井くんに隣にいる陸が何やら話しかけている。



陸ってば…何言ってるんだろ。変なこと言ってるんじゃないでしょーね?


選手達はゴーグルをはめて構えると、審判がピストルを掲げしーんと静まり返った。

私は両手を握りしめて祈るように見守る。






パンッッッ
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