俺に溺れとけよ
「なんだー私はてっきりそうなのかと思ってた~美海ちゃんが来た途端すぐに着替えてるから勘違いしちゃったわよ」

「うるさいな…」


恥ずかしそうに背を向けてリビングのテレビをつける蒼井くん。

私はクスクスと笑いながら準備を手伝い、しばらくするとおじいちゃんとお父さんもやって来て全員揃ったところでパーティーが始まった。





「美海ちゃんいっぱい食べてね~」

「はい!」


蒼井くんの隣に座って食べるのはとても緊張するから、私はひたすら箸を進めていた。




「家に女の子がいると緊張するなぁ」

「若い子はわが家にはいないもんな」

「失礼なこと言ってる~」


ゲラゲラと笑うおじいちゃんとお父さんに、蒼井くんのお母さんが突っ込みをいれる。


家族みんな優しくてこの中で蒼井くんは育ったんだと思うと、とても納得出来る自分がいた。

こんな素敵な人達に育てられたからあんなに優しいんだろうな…







「あら。美海ちゃんがケーキ作って来てくれたの!?」


夕食後。冷蔵庫を開けてケーキを取り出したお母さんが、私の作って来たケーキを見て驚く。




「あ、はい!小さいんですけど…」

「うちもホールでチーズケーキ買ったから良かったら食べてね」

「はい」


お母さんは美味しそうなホールのチーズケーキを切り分けてくれて、私に紅茶と一緒に出してくれた。





「紡はー?」

「…今日はこっち食うからチーズケーキは明日食べる」


蒼井くんはそう言うと、私の作ったケーキにそのままフォークを刺して全部食べてくれた。





「うまいよ」

「良かった…」


口を動かしながら笑ってくれる蒼井くんを見て、幸せな気分になった。








「今日はごちそうさまでした。手土産までもらっちゃってすみません」


夜の10時近く。帰る事にした私を蒼井くんの家族が玄関まで送ってくれる。





「こちらこそ来てくれてありがとね。後片付けまで手伝ってもらって…美雨(みう)の子供だと思えないわよ~」

「美雨?」


私の母の名前を、さらっと呼び捨てで言う蒼井くんのお母さんを不思議に思う。




「あれ?聞いてない?私と美海ちゃんのお母さんは同じ中学なのよ♪私の一つ下が美雨で」

「そうだったんですか!?」


知らなかった!お母さん何にも言わないし…




「よく一緒につるんでたから深い付き合いなのよ。美海ちゃんが出来て東京行っちゃってからも連絡は取ってたんだけどね」


ということは…私の知らないところで親同士は繋がってたってこと?

もしかしたら、蒼井くんともっと早く知り合えたかもしれなかったのか…





「こっちに戻って来てくれて嬉しいよ。紡とも仲良くなってくれたし余計にね!これからうちのこと親戚とでも思ってくれればいいからね」

「はい。ありがとうございます」


蒼井くんちと親戚なんて…こんな嬉しいことってある??
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