俺に溺れとけよ
健くんは少し照れながら言った。




「内緒な」

「うん。絶対言わないよ!」


ふっと笑って作業を続ける健くん。その姿が何だか切なかった…











「聞いてよ~健ってば私が貸した漫画もう一ヶ月も戻って来ないの!私まだ読んでないのにさ~」


数日後。凪が朝からプンプン怒って、学校へ向かう途中健くんの愚痴ばかり言っていた。




「健くんそういうの忘れちゃいそうだもんね」

「んとにもう…何度言ってもこれだもんね」


凪の口調には昔からの腐れ縁みたいな気持ちが込められているように聞こえた。


健くんが凪のことが好きだと知ってから、妙に2人を意識してしまう。

健くんの気持ちはわかったけど…凪はどう思ってるのかな。聞きたいところだけど蒼井くんのこともあるし聞にくいんだよね。







「水野ちゃんのおにぎりって本当に美味しいね~」

「ありがとう。余分にあるからたくさん食べてね」


昼休み。蒼井くんと川崎くんと凪で教室でたまり昼食を食べていた。最近は水泳部のメンバーで昼休みに会うことも少なくはない。

私の作って来たおにぎりを川崎くんと蒼井くんが食べてくれる。それだけで幸せな気分。





「あ、健!」


すると健くんが菓子パンをかじりながら近づいて来て、私達の近くにあった椅子にドカッと座った。





「売店にまだパンあった?」

「んーもうほとんどない」

「はぁ…」


蒼井くんがガクッと肩を落とす。




「すごい食欲だね。もうお弁当もたべちゃったんでしょ?」

「うん。午前中に早弁して足らない…水野のおにぎりあって良かった」


安心したように言う蒼井くんにクスクス笑う私。


いっそのことおにぎりだけじゃなくて、普通にお弁当持って来た方が早い?この人達絶対残さず食べるよね…

恐るべし高校生男子の食欲。






「水野」

「ん?」


お弁当を食べながらそんな事を考えていると、近くにいた健くんが私にコソコソと呼ぶ。目を向けると健くんは手招きして立ち上がり、廊下に出て行った。
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