私のイジワルご主人様
…え…?
あれ、ただのラブレターじゃないの?
「こ…」
「鴻上くん、おはよう」
あたしが声を発するより早く、近くにいた女の子が話しかけた。
鴻上くんはすぐさま笑顔で挨拶を返し、なんでもなかったように立ち去っていく。
その後ろ姿を見送っていると、あたしの背後から元気な声がかかった。
「ひーな!!」
「あ、沙紀。おはよ」
沙紀は同じクラスの友達。
気さくで、わりとなんでも話せる。
あたしが告白するときも背中を押してくれて…鴻上くんとあたしの関係を知っている唯一の存在だ。
「昨日はデートだったんでしょ?」
「デートっていうか、ご褒美…」
「またまたぁ!!ご褒美という名のデートでしょ!!」
まあ…外れてないかな…?
「くわしく聞かせてよね!!」
「…うん」
そう答えたものの、あたしの頭の中は先ほどの鴻上くんのことで一杯だった。